【結婚生活を綴った名著…『そうか、もう君はいないのか』(城山三郎)】
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『落日燃ゆ』などの作品で、経済小説という分野を切り開いた作家・城山三郎が、
先立たれた妻との結婚生活を綴った文章が、彼の死後に発見され、
城山三郎の娘が、その遺稿をまとめ直して発表されたのが、『そうか、もう君はいないのか』という作品です。
城山三郎は、妻を深く愛しており、
『そうか、もう君はいないのか』というタイトルには、亡き妻への深い愛情、痛切な思いが込められているようです。
城山三郎と、妻・容子との出会いは、お互いが学生の頃に遡ります。
図書館に出向いた城山が、思いもよらず図書館が休館になっていたため、戸惑って佇んでいた所に、
偶然、同じ図書館に来ていた容子が現れ、そこで二人は初めて出会いました。
明るい色のワンピースを着ていた容子は、「間違って、天使が空から降りてきたようだ」と、城山の目には映り、眩しく感じられたようです。
ともかく、あと数分でも時間がずれていれば、二人は生涯出会う事もない運命だったわけですが、
その運命的な出会いを機に、二人は紆余曲折を経て結婚します。
そして、容子は明るく楽しい人で、
生涯にわたり、城山三郎という人の人生を照らし続ける事になりますが、
そんな二人の結婚生活、何気ない日常の様子が、この作品では淡々と綴られて行きます。
その何気ない描写の内に、城山の亡き妻に対する深い愛情と、夫婦としての絆が感じられ、読者の胸を打ちます。
振り返ってみれば、そんな日常生活こそが、何よりも大切な素晴らしい日々であり、それはもう帰って来ないのだという思いが、行間から滲み出ていて、私もとても感動したものです。
そして、夫を残し、容子が癌で亡くなる、二人の永遠の別れの場面は、涙無しには読めないと思います。
このように、『そうか、もう君はいないのか』は、
結婚とは何か、夫婦の絆とは何かという事がとてもよく描かれた名作なので、
是非、これからも読み継がれて行って欲しいと思います。